オーバーチュアとヤフーがひとつになることで起きうること

Japan.internet.com Webファイナンス - ヤフー、オーバーチュアの発行済み株式の100%を取得
http://japan.internet.com/finanews/20070831/5.html


今のところ国内最大手のポータルと今のところ国内最大手の検索連動型広告サービスプロバイダが合併。日本を除く諸外国ではこのケースがデファクトになっており、ようやく、といったところですね。では、この合併で何がおきるのか、そこが気になるところです。


代理店という業態にいると、ついついメガクライアントをベースに話を進めてしまいそうになりますが、オーバーチュア全体で見た場合、いわゆる「オンライン(代理店を経由せず、広告主が直接オーバーチュアと取引を行う契約スタイル)」のアカウントに対して好影響が出そうです。
というのも、ヤフーのカスタマーケアのレベルは一概に高く、コピペしか返ってこないとの批判も一部にはありますが、24時間以内の返信が原則で、その期限を遅延するとそれだけで事故のような扱いになる徹底された運営方針は、カスタマーケア意識がそれほど高くないオーバーチュアに何らかのエッセンスを与えるはずです、いや、与えてほしいところです。


次に、単純にヤフーの経営状態の改善が予想されますね。ヤフーはオーバーチュアにとってみれば(実際はヤフーにおんぶに抱っこだったとはいえ)ネットワークサイトの1社でしかなく、オーバーチュアからの売上マージンによる収入にとどまっていたものが、クリックから発生する売上をすべて自社計上できるようになるわけで、次回決算にどう織り込んでくるのか、ここは見ものだと思います。


あとは技術的な面がおそらくいくつか。開発体制面からすると、日本にはおそらく「本当の意味での」エンジニアが存在しない(運用担当くらいはいるでしょうが、「開発」はしていないはずです)オーバーチュアに対し、多数のエンジニアを自社内外に抱えるヤフー。オーバーチュアは現時点では100%ローカライズプロダクトしかマーケットに対して提供いませんが、ひょっとするとヤフーのエンジニアリソースを借りつつ、自社開発体制を持つということもあるかもしれません。


それが可能だとすると非常に面白い展開になると思っていまして、ヤフーが提供する行動ターゲティング系の商品や大量に保有しているであろうログインベースの顧客セグメント情報、検索結果からどのページに行ったのかのトラッキングログなどがオーバーチュアのプラットフォームに活かされることがあるとすると、これは強力な広告プロダクトになります。たとえば、「保険」と検索した人の中でも、20代女性でかつ過去に自社のウェブサイトに来訪経験がある人のみに対して広告を露出できるアプローチが存在した場合、かつそれが動的に管理できるとすると、その破壊力は従来の広告商品とは比にならないものになるはずです。それが大手広告主だけでなく、現在オーバーチュアがターゲットとしている中小企業にも門戸が開かれるようなことがおきれば尚更で。


セグメントがきつくかけられる商品は当然ターゲットとする消費者のボリュームが減り、売上がシュリンクしがちだというジレンマがありますが、細分化の一途をたどるネット広告、高機能の商品はまだまだ爆発的にセールスが伸びる可能性はあるはず、です。


今回の合併の目的は、平たく言うと「ひたひたと迫りくるGoogle対策」であることは間違いありませんが、その目標が達成されるかどうかは、まだまだ不透明です。もしも合併によるシナジーが何も産み出せず、単に「名刺が変わっただけ」だとすると、世界的にみても稀有な存在だった「Googleを抑え込むヤフージャパン」はそんなに長くないのかもしれません。


古巣に愛を込めて。期待しています。