Yahoo!検索が物悲しいキャンペーンを実施している件について


どうせ期末で、どうせPVやらUUが目標に届いていないからなんだろうけど。もしくは期初からこれを織り込んで目標を立てているからなんだろうけど。あ、あとあれか、プレミアム会員を増やすことにも資する可能性があるってことか。

本日2月18日より、Yahoo!プレミアム会員のお客様限定で、
検索をするとYahoo!ポイントがたまるキャンペーンのエントリーを開始しました。

キャンペーンにエントリーしたYahoo!プレミアム会員のみなさまには、Yahoo! JAPAN IDでログインした状態で
Yahoo!ウェブ検索をご利用いただくと、1か月の利用日数×1ポイントをもれなく進呈します。


検索で毎日ポイントがたまる! - Yahoo!検索 スタッフブログ
http://searchblog.yahoo.co.jp/2008/02/post_70.html


検索大好き! もっといえばYahoo!検索のことが気になって仕方がないという業界人にしかリーチしていないこのブログと検索結果でしかプロモーションをしていない(他にもやってたらすいません)このキャンペーンがどれほどの効果があるのか、少々考えてみたいな、と。


目的は冒頭で書いたPV、UU、PV/UU(1ユーザーあたりのPV)、そしてプレミアム会員数の増加(目的としていない、あったとしても補助的な目的だとは思いますが)だと想定します。

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■ターゲットA:スタッフブログ読んでます! Yahoo!検索大好きな業界人
そもそもそんなキャンペーンを展開しなくても、黙ってても毎日検索しまくっています。よってこのキャンペーンがUU増加に資することは考えづらく、検索総回数(「何日」検索したかではなく、「何回」検索したかという数値)により当選確率が上がるわけではないため、黙ってても毎日検索する人が、「あと1回検索しちゃおうかしら」と思うはずもなく、PVも増加しません。と、いうわけで何も変わりません。

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■ターゲットB:検索結果で偶然見つけました! という人々
まず、検索結果を表示したユーザーにおけるプレミアム会員の割合について考える必要がありますね。このキャンペーンの前提条件は「プレミアム会員であること、もしくはプレミアム会員になってくれること」なので、割合次第ではプレミアム会員の増加にある程度インパクトがあるかもしれません。
ただ、運悪く「20日検索すると1000ポイント」「毎日検索すると5000ポイント」というプラスインセンティブに当選しない場合は、100ポイント弱の獲得にしかならず(1日1ポイント、3月1日〜5月31日で92日間、なので92ポイントしかもらえない)、プレミアム会員費の「月額295円」というコストに対して投資対効果が低すぎる状態にあります。なので、非プレミアム会員がこのキャンペーンを目当てにプレミアム会員になる、という期待値は限りなく低いのではないか、と推定されます。


そして、主目的(であろう)PVやUU、UU/PVについて考えてみましょう。そもそも、これらの数値を上げるのは何のためなんでしょう。Yahoo!は増加したトラフィックをどのようにマネタイズしようとしているのか、答えは単純です。


PVやUU、UU/PVが増えると、媒体としての価値が上がります。それはテレビが視聴率を大事にするのと同じ。なので、たくさんの人が検索してくれるとうれしいわけですね。
しかし、キャンペーンによる効果というのはあくまで一時的であるということを代理店および広告主は知っており、仮にこのキャンペーンが大成功を収めたとしても、その効果は極めて高い一過性を帯びている、ということももちろん知っています。よって、これで媒体価値が「恒常的に」上がるということはない、と断言できます。


他のマネタイズプランとしては、クエリが増えることによってスポンサーサイト(検索連動型広告)のクリックグロスが増加し、収入が増加するということが推定されます。
ただ、この推定は厳しいです。キャンペーン目的で検索した人は明確な意思もなく検索していると考えられ、明確な意思とクライアントの訴求とのマッチングに優位性が存在する検索連動型広告のクリックボリュームが増加することは考えられません。


というわけで、このキャンペーンを使ってすぐにマネタイズしよう、という考えであればこれも厳しいです。

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他に、ターゲットA、Bにかかわらず、「Yahoo!検索が便利であること」を知ってもらうことによってYahoo!検索に対するブランドロイヤリティが向上する、ということを狙いとしているかも、ということも考えられます(ランディングページでも「港区の天気」を例示していますし)。
しかし、この目的でキャンペーンを行うのであれば検索させるクエリに限定性を持たせるべきで、普段一般利用者が使っていないようなクエリ(たとえば「オークション!」で検索するとヤフオクトップに飛びます、とか。知らない方はやってみてください)をたくさん例示しないと意味がありません。昨日と同じ検索結果を見せられて、「あ、Yahoo!検索って結構便利かも」という態度変容を起こす消費者はいないのではないか、という推定に基づきます。


と、いろいろ書いてきましたが、このキャンペーン、やはり不可解です。Yahoo!検索は国内随一の利用者を誇っており、世界でもまれに見る「Googleを抑えきっている」検索サービスです。2番手以降の検索サービスが最大のシェアを誇るYahoo!に挑むための戦略であれば百歩譲って理解しなくもないですが、リーダー企業がやる戦略では決してない、と考えています。でも、このキャンペーンの実施主はYahoo!


キャンペーンの内容があまりよくない、ということに対して述べてきましたが、検索結果にこの「おしらせ」が掲出されることによって、もっとネガティブなインパクトがあると思うのです。極めて単純なロジックですが、この「おしらせ」、極めて目立つ位置にあります。そう、そこには普段スポンサードサーチ、つまり広告が出ているのです。


この非常に目立つおしらせに誘われて、広告をクリックする蓋然性が高い消費者がエントリーのページを見ることによって本来クリックされるべきであった広告がクリックされないことによる損失はどの程度に見積もっているのでしょうか。シミュレートの結果問題ないと判断されてGoが出ているのでしょうが、単純に広告が押されなくなって売り上げ上がらずにキャンペーンも盛り上がらず、という結果が見えてしまうというシナリオは、少し悲観的に過ぎるのでしょうかね。


あと、一度応募したコースの変更ができなかったり、検索結果に出る「おしらせ」右端のほうの「×」を誤ってクリックすると2度と登場しなかったり(Cookie消すと出るけど)と、細かいところでもトホホな感じです。ちなみに余談ですが、同じ検索結果を取得できるLifeMile(検索結果はYSTだから)で検索したほうがマイル蓄積効率は良かったりして。

ライフマイル(注:ファーストビュー下部の検索窓から検索するとマイルがたまります)
http://www.lifemile.jp/


ともあれ、どんな結果が出るか楽しみです。良い結果だといいですね!