私がパーソナライズドサーチにそれほど否定的でない理由
CAT小越氏のエントリにお返事。
僕がパーソナライズドサーチに否定的な理由|今日のニッパウ
http://ameblo.jp/nippau/entry-10122415435.html
否定的な理由が簡潔に述べられています。以下。
結論から言ってしまうと、趣味嗜好で検索結果を調整するのがパーソナライズド
サーチだとして、検索は瞬間の欲求だから。
確かに、検索は瞬間の欲求です。強く顕在化した瞬間の欲求に対して訴求するという広告モデルを確立した検索連動型広告が成功していることからも明確です。
ひとつだけ補足するとすると、パーソナライズドサーチについての考え方はもう少し複雑で時間がかかり、そしてもう少し緩い、ということ。
まず、「複雑で時間がかかり」について
パーソナライズドサーチについて、よくある説明がこんなのだ。
たとえばアップルと検索する人がいたとしますよね。
コンピュータのアップルかもしれないし、果物のアップルかもしれない。
でも、その人の趣味嗜好が分かっていてコンピュータが好きだと
分かっていれば apple,inc のページを表示するのがいいよね?
はっきり言って、このアプローチは100%間違っている。
これ「だけ」であれば、100%とまでは言えなくとも、間違った検索結果をユーザーに提示する可能性は高いでしょう。よほどのナビゲーショナルクエリ(ユーザーのインテンションが極めて明確な検索キーワード。検索をブックマークのように使う場合。例えば「youtube」など)でない限り、ユーザーの「その瞬間の本当の意図」を正確に把握することは困難です。今日はりんごについて知りたいし、明日はMacBookについて知りたいかもしれません。
ただし、その人が「普段はこれを探している可能性が高い」ということを長期間のログ、それは例えば検索履歴や検索結果のクリックログ、Yahoo!などのポータルであればほかのプロパティでのビヘイビア(Yahoo!オークションでの入札履歴とか、Yahoo!ショッピングでの購買履歴とか)をつぶさに解析し、ユーザーデータベースにつなぎこむことによって、ある程度提示することは可能なはずです。これが「不可能である」という前提に立ってしまうと、ベイズ理論とかレコメンドエンジンとかCRMなどの概念がすべてぶっ飛ぶので、ここ、つまり「ある程度蓄積されたユーザーの行動履歴はそのユーザーの趣味趣向を正確に表す」という考えは信じたいところです。
なので、「その人の趣味趣向が分かって」いるの程度によるのですが、正確に把握をしていれば正確な検索結果を提示できるという考えのもと、検索エンジンのパーソナライズ化はそのプロジェクトを進捗させています。
で、ここまでだとあまり議論になっていないので、「もう少し緩い」について。
3年半ほど前に、Y!で検索をパーソナライズ化したいな、と思っていた頃、勘違いをしてはいけないと気をつけていたのは、「検索結果はたった一つの正解のみを示すものではない」ということ。当然ですが、検索結果には多数のリンクが存在し、ほとんどの場合、もっともアテンションをとり、クリックされるのは自然検索結果の最上位のリンクですが、そのCTRが100%になることはほとんどありません。
だとすると、考えるべきは検索結果全体なのです。パーソナライズというと、どうしても最上位のリンクに最適なものを出すことだと捉えられがちなのですが、検索結果を作る側はもう少し緩く、広く捉えていて、少なくとも最初にユーザーが見るページ、つまり検索結果の1ページ目全体で最適な結果を出そう、と考えています。つまり、KPIは「1ページ目でいずれかのリンクがクリックされる割合」であり、防ぐべきは「次のページに遷移されること」です。
よって、「複雑に時間をかけて」多角的に分析した結果、Aさんがコンピューター好きであるというジャッジができた場合、最上位にアップルコンピュータのリンクを置く、というのはそれほど問題になりません。どちらかというと重要なのは、「コンピューターではないアップル」に対してコンピューター好きが興味を持った場合に、1位ではないにしろ、それ以外のリンクにきちんと「りんご」についての誘導を設置しておくことだったりします。
そういうわけで私は、パーソナライズは「良い」検索結果をユーザーに提示する優れた方法だと考えています。未知の分野でもあるので、とにかくトライアンドエラーでどんどん進めてほしいな、と。
>小越氏
そんなこんなで、長々と書いてみました。4階のソファでもいいですし、EMMAでもいいので、またお話しましょう!
検索っておもろいなー。いつかまたやりたい!