2045年のGoogle、そして2045年のぼくたち


今日までこの連載に目もくれなかったのですが、おもしろいです。これ。
で、「PICSY」の鈴木健さんの刺激的なエントリ。

CNET Japan Blog - ギートステイト制作日誌:2045年Google
http://blog.japan.cnet.com/geetstate/archives/2006/09/2045google.html


ルーマンとグーグル」、早く読んでみたいです 笑

Human Gridとは、文字通り人間グリッドのことです。グリッド・コンピューティングという計算機科学の分野があります。これは遊休している計算機資源を連結させてひとつの計算機とみなし、大規模な計算を実行するための計算機アーキテクチャのことをいいます。人間グリッドでは、遊休している計算機ではなく、遊休している人間を利用します。たとえば、100万人以上の人間の脳の能力を連結し、ひとつのコンピュータとして利用してしまいます。


「Human Grid」をコントロールする側になれない、つまりネットワーク上の1ノードでしかない(当然設計する側もノードのひとつなんですが)ぼくたちに起こる状況というのは、どういうものなんだろうというのを、ちょっと視点を変えて考えてみます。


結論から言うと、男女の雇用機会均等、終身雇用、若者の未就業状況云々を喧々諤々議論していたはるか「昔」からは想像できない、「ネットワーク上の労働力の最適化」が生まれ、真の意味での「実力主義」になるんだな、と(適切な言葉が見当たらないので超安っぽい表現ですが)。

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個人のプロファイルはオープンネットワーク化されたSNS(のようなもの)にアップロードされ、その瞬間でのステータスはリアルタイムに変更されます。そしてそのステータスはネットワーク上に属する個人もしくは組織であれば誰でもが参照可能な状態に存在することになります。個々人は日時に縛られず、ミッションに応じるかどうかの「ポート」を開け閉めしておくだけで、どれだけ休もうが働こうが自由になります。


人が生まれてからこなしてきたミッションは全てネットワーク上にトラッキングされ、評価と共に蓄積されていきます。あるミッションに取り組むかどうかという点においては個人の意志に基づく自主的な意向はごくわずかしか勘案されず、あくまで客観的に、過去のミッションの完遂度、クオリティから判断され、適任であると思われる個人に分配されます(ほぼありえないことですが、複合的な判断の結果、あるミッションに対する「適合度」がまったく同位だとされた場合にのみ「モチベーション」という非常に曖昧な概念があくまで補足的に用いられます)。


上記のような「最適」が積み重なることにより、オンライン上で発生するタスクは全体最適へと着実に近づいていくことになります。あらゆる仕事に適合度が高い人間もいれば逆にどんなミッションにも適合しない人間も発生しますが、この環境下においては、何らかのスキルを身につけるなどして自ら適合度を上げる努力をするしかないのです。


また、RFIDの普及、ユビキタスネットワークの実現、坂村健氏の言葉を借りれば「どこでもコンピュータ」の環境が整備されていることは想像に難くない2045年。位置情報にも連動したそのネットワークは、オンライン上で完遂可能なミッションだけではなく、人が生きていくうえで必要不可欠な、オフラインを含むあらゆる行為を、いったん集約し、それを行うのに最も適したノードに再分配するシステムとしても機能することが可能になります。


昨日の晩御飯の洗い物から始まり、サグラダファミリアの工事、そして宇宙飛行士として地球が青いかどうかを確かめるのも、もしかしたらぼくでもなく、どこかのスペイン人でもなく、ガガーリンでもない、それをするのに「最適な誰か」が行うことになるのです。では、なぜその人なのか。それはその人が行うのが最適であるからです(豪快な循環論法ですが、最適であることの判断基準はあまりに多様であり、敢えて言えばその人物の過去と現在から総合的に判断されます。現在のような男女や年齢、学歴での断片的な評価というのは確実にその役割を終えるでしょう)。


さらに言えば、企業という単位さえももはや存在しなくなるかもしれません。少なくとも現状のような形では存在しなくなることは確実でしょう。そもそも「属企業的」である必要が全くないわけですから。企業は営利を目的として、継続的に生産・販売・サービスなどの経済活動を営む組織体である以上、ある企業の最適は社会全体の最適とは必ずしも相容れないはずです。


そして、他人と争う必要はありません。なぜなら他人の利益を奪ってまで行う行為は全体最適の観点から見ると誤りだからです。各人は「理想的な社会」に向かって規定されたあらゆる行為を行うのです。この思想により全世界に平和がもたらされることになります。Googleバンザイ!

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いつやってくるとも分からない「Human Grid」。予言どおり2045年にこの変化が起こったとき、もしくは2006年の今この瞬間に実現化したとして、自分に割り振られるミッションがどのようなものか。それを考えることってすごく重要なことだと思います。


Googleがこんな世界を実現できるのか、そしてそもそも実現したいと思っているのか(労働時間の2割を自分の好きなことにあててよい会社がそんなことを考えてはいなさそうですが)分かりませんが、もしもこんな世界が実現化したときに、おろおろしないためにも。


その時、ぼくたちはどんな「仕事」をしているのでしょうか。楽しみ楽しみ。