検索連動型広告もパーソナライズド?


id:rinriさんにお題を頂戴しておりました、以下の記事についてコメント。

秋元@サイボウズ研究所プログラマーBlog: クリックしない人には広告が出なくなるようになるかも
http://labs.cybozu.co.jp/blog/akky/archives/2006/09/google_adwords_personalization.html


まずは事実から。ぼくもちょこっと試してみましたが、本当に出なくなりました……。ただ、何しろサンプル数が少ないので、もう少し実験してみたいと思います。


そもそもGoogleの検索結果におけるAdWordsの部分の順位というのは入札金額(CPC)×品質スコア(QS)=AdRankによって決定されています。QSはCTRをはじめとした複合的な係数の集合体なわけですが、「ランディングページの適合性」や「広告テキストに一定のフレーズが挿入されている場合」には加点されるということが明らかになっているほかはその実体は明らかにされていません。ただし、あくまでCTRが主な指標になっていることは間違いないと思っています。


つまり、どんなに高い金額でCPCで入札を行ったとしても、QSが低い広告は上位に表示されません。場合によっては表示すらされなくなってしまうこともあります。


で、その中でも特にAdRankが高いものが上位の青い枠、通称「プレミアムポジション」に掲載されることになります。右の掲載枠に比べて非常にCTRも高く、誘導効率の点で言えば、「この枠に入らないと意味はない」場合も存在するほどです。


Google AdWordsはユーザーごとの出しわけというのは現時点では基本的にしておらず(IPアドレスベースのローカルターゲティングは可能)、このトピックが事実だとすると、Googleはユーザーの行動履歴を把握したターゲティング(に近いもの)を既に開始していることになります。


で、代理店及び広告主からすると、この変化はあまり大きな影響は無いと思っています。というのも、非常にクリックしやすいプレミアムポジションに広告が表示されているにもかかわらずクリックをしないユーザーというのは、そもそも広告に興味がない可能性が高いと推定されます(ただ、これは表示されている広告に問題があるともいえます。別の広告が表示されていたとしたらクリックされていたかもしれない、という可能性はゼロにはなりません)。そうしたユーザーに対して無理にインプレッションさせても、万が一クリックが発生した場合でも、その先の目的(会員登録であったり購買であったり)に至る可能性はさらに低くなるといわざるを得ません。つまり、コンバージョンレートが低くなることが目に見えているユーザーに対して広告を無理に表示する必要は無いわけです。


つまり、広告に興味が無い人に対しては広告を出さなくて済む、という点で、費用対効果は、無駄なクリックが減少することにより、さらに上昇するかも、というのが私の考えです。

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Yahoo!はプレミアム会員とYahoo!BB会員で既に1000万を超えるユーザーの個人情報を取得していますし、GoogleGmailGoogle Calendarをはじめとしたログイン前提のサービスをローンチし続けています。こうしたことから考えても、個人の行動履歴をトラッキングする下準備は完了しているといって間違いないでしょう。


求める人に対して求められているであろうものを提供する、つまり需要と供給マッチング精度は今後さらに上昇していき、OvertureやGoogle AdWordsに限らず、あらゆるネットワーク、あらゆるメニューにおいて、インターネット広告の費用対効果はより改善していく、と勝手に夢見ています。


単純な例を挙げれば、「転職」というワードで検索するユーザーが男性なのか女性なのか、私たちに知る術は無いですし、もちろん男性のみ、女性のみにターゲティングすることは不可能です。ただ、例えばYahoo!のIDを持っているユーザーは(その信憑性は置いておいて)ID登録時に個人情報を記入しています。その情報を利用すればより精度の高いターゲティングが行えることは間違いないでしょう。


個人情報保護法だったりとか、ユーザーが事業者に対して個人情報を開示することへの抵抗感とか、そういうもろもろの問題は確かに存在しています。ただ、こうした障壁はインターネットに限らず、現在まで盛衰を繰り返してきたどんな産業においても多かれ少なかれ直面してきた問題です。


時に利便性であったり、時にコスト面であったり、その理由は様々だとは思いますが、本当に消費者がハッピーになれる、そんな確信を消費者に抱いていただくことができれば、法律や感情の壁というのは越えられる可能性はきっとある、と思いながら日々プランニングを続けていたりします。


広告主も喜び、ユーザーも喜び、(ついでに)代理店も喜ぶ。ターゲティングを通じてインターネット広告業界全体がさらに大きな喜びを提供できるようになる日は、きっとそんなに遠い未来ではないと思っています。



そんなこんなで、AdWordsの話から大いに飛躍してみました。こんなもんでいかがでしょうか>rinriさん


以上です。