ひとりを愛せる日本へ。


逗子に向かう横須賀線の中で、心揺さぶられるクリエイティブに遭遇。
名コピーだし、いいスチールだわー、と思いつつケータイで激写。



で、すぐに降りなきゃいけなかったのでじっくり読めなかったのですが、あとで調べてみると、郵政民営化の告知キャンペーンだったんですね。さすがお役所の一大事、いいクオリティで仕上げてらっしゃる。


ひとりを愛せる日本へ。‐日本郵政グループ
http://jpgroup.jp/


ウェブサイトもきれいに作ってありますね。ユーザビリティもきわめて高い。CMはどれも、ロードムービーを見終った後のような清々しい気分になります。ぜひご覧ください。


で、このキャンペーン、ひとつだけ気になる点があるのです。ひとつだけ。それは「ひとりを愛せる日本へ。」というコピー。


冒頭で「名コピー」と評したのは、コピーと写真のクリエイティブ「だけ」が頭に入った段階でのことなのですが、ボディコピーという名のミッションステートメント、というか能書きを読んでみると、はて、このコピーは何を言いたいのかしら、とぼやけました。

日本にくらす人にとって、私たちの仕事がいかに大切か。それは、私たちがいちばんよく知っています。民営化に寄せられた人々のとまどいや、不安や、期待。その声の切実さは、みなさんの村や街で、みなさんとともにくらす私たち自身が、誰よりもよく知っています。ひとりひとりの思いをうらぎってはいけない。心からそう思っています。だから、どうか、心配しないでください。それどころか、私たちは、それ以上のことを考えています。民営化という変化は、かつてないチャンスではないか。できなかったこと、いつかやりたいと思っていたことを、どんどん実現してゆきたい。そんな思いで、燃えているのです。やらなければいけないことは、山ほどあります。勉強しなければいけないこともいっぱいある。でも、私たちはがんばります。24,000の、郵便局というネットワークを持つ私たちがよくなることは、とりもなおさず、日本という国がよくなることだと思うからです。「ひとりの重さは、日本の重さ」。日本という国を、ひとりの人間にたとえるなら、その肉体のすみずみにまで、若く、みずみずしい力をゆきわたらせたいと願う、私たち日本郵政グループです。


日本のすみずみまで幸せになる民営化。
それが私たちの挑戦です。


日本郵政グループからのメッセージ‐ひとりを愛せる日本へ。‐日本郵政グループ
http://jpgroup.jp/html/message/


非常に力強く、心にストレートに響く名文です。郵政民営化の中身はともかくとして、何も知らない方がこの文章を読んだら、これから起こる変化に期待せざるを得ないんじゃないかと思うほど。


ひと単語毎の語の選び方、漢字とかなの使い方など、コピーライティングの技巧も素敵。個人的には「くらす」「がんばります」を開いているあたりにクリエイティブ魂を感じます。


では、何が「気になる」のかというと、冒頭のコピー「ひとりを愛せる日本へ。」とこのボディコピーとの関係性なのです。さて、「ひとり」はどんな「ひとり」なのでしょうか。


上のボディコピーに用いられている「ひとり」は


・ひとりひとりの思いをうらぎってはいけない
・「ひとりの重さは、日本の重さ」
・日本という国を、ひとりの人間にたとえるなら


というわけで、最後の「ひとり」だけが異なる用法(比喩表現の媒介としての「ひとり」)で用いられてしまっているせいか、どのレベルの「ひとり」なのかが今ひとつピンと来ない結果になっている気がします。ここは「ひとり」の使い方にもうちょっと気を使ってほしかったな、と。


それと、おそらく文脈からすれば、「日本(≒民営化する日本郵政グループ)が国民ひとりひとりを愛せるようになります(なることを目指しています)。」ということを言わんとしていると思うのですが、この内容を伝達したいのであればあまりに技巧的過ぎて伝達スピードが遅くなるように思います。この広告のターゲットは「日本国民全員」のはずなので、もっと歩み寄った表現がほしいな、と。


仮に、伝達したい意味内容が、私が想定しているもので間違いないとすれば、

「ひとりひとりを愛せる日本へ。」


としたほうがはるかに分かりやすいと思います。レトリックの味ははるかに薄まりますが。


で、まじめに突き詰めて考えるとなにやら雲行きが怪しくなるこのクリエイティブですが、横須賀線の中の私が「名コピーだなあ」と考えたのは、少し別の解釈をしたからなのです。


最初にこのクリエイティブが目に入ったとき、「ひとり(で生きていく自分)を愛せる日本へ。」という意味内容かと思ったのです。「JP(日本郵政グループ)」のロゴがJTBに見え、美しいスチール写真は旅行先の景色か、と。


ボディコピーをなくして、JTBとかJRの個人旅行(特にひとり旅)向けの広告に転化させたらものすごい力を発揮しそうだな、と思うのでした。


さあ、コラボっちゃえ!