SFC OPEN RESEARCH FORUM 2003 坂茂による「東京デザインミュージアム設立構想」のレポート、というか防忘録。

http://orf.sfc.keio.ac.jp/pop/10.html
(→http://d.hatena.ne.jp/simplife/20031112#p3



坂茂研究室の学生さんが作った完成予想パース。協賛(予定)企業のロゴがでかでかと。


坂茂研究室の告知ページはこちら→http://web.sfc.keio.ac.jp/~you413/van/dm/
 プレゼンの詳細データが後日アップされる予定だそうです。


参加者は以下の通り。事前に発表されていたのとちょっと違ったものの、
いずれ劣らぬデザイン界の重鎮(?)揃い。
仕事放り投げて駆けつけた甲斐がありました。


※なんか議事録みたいになってしまいました…
 ご興味ない方はスルーで。


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日時 : 2003年11月21日
会場 : 六本木ヒルズ森タワー24F
参加者 : Astrid Klein(KDa)、隈研吾木村恒久、黒川雅之、
サイトウマコト永井一正坂茂研究所、平沢豊、深澤直人、藤塚光政、
Mark Dytham(KDa)、水野誠一、三宅理一(以上敬称略)
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1.オープニングトーク坂茂

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・日本はデザイン大国である。
 →こんなにデザインが街中にあふれているのは世界で日本とイタリアくらい。
 →それなのになぜデザインミュージアムがないのか?
・従来はとりあえず箱を作って、その中にいろいろ入れて…
 →これからは箱モノ自体もデザインしていこう。

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2.坂茂研究室案のプレゼン

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※詳しくはDreamDesignにいろいろ載ってます。
・なぜお台場か?
 →十分な空き地がある、来訪者数はディズニーランド以上。
 →かつてグッゲンハイムを日本にも、という構想があった。
  (ちなみにコンペにはザハ・ハディド、ジャン・ヌーヴェル、坂茂が参加)
  その建築予定地だったスペースをそのまま利用する。
・常設展示となるものは工業デザイン、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、
 ファッション、グラフィック等、ありとあらゆるデザイン。
・お台場には建築制限があり、「利用期間が10年以内の仮説的建築」である必要がある。
 →建築構造的には簡易なものである必要があり、かつ素材はリユースできるものを。
 →コレクションすることを主眼に置かない。

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3.各パネリストの意見

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水野誠一
・デザインが経済産業省によって管轄されている現状
 →このままでは芸術、文化になりえない。
・経済界においては金をかけて行われたデザインは余計な装飾物に過ぎない。
・10年間の時限付というのは面白い。
・バーチャルであってもリアルであってもアーカイブを作ることが重要。
 →この案にはアーカイブ的要素がない…
・現状の試算では1日2000人の来場者を見込んでいるが、少々甘くないか?
 →魅力ある企画を行い続けることが必要。
・従来の美術館にないようなゲリラ性(TDBのような)が求められる。
 →絶えず何らかのイベントを行い、アクティブに。


三宅理一
・役所を信頼するのはやめましょう。
・コンソーシアムをSFCで作って、動く予定。


藤塚光政
・現代における日本民藝館だね。
倉俣史朗ミュージアムさえないのに下らんミュージアムが多すぎる!
・プロダクトを展示するなら、各時代で認められたものはもちろん、
 認められなかったものも並存させて欲しい。
・未来の主役である子どもがリピーターになるようなものを。


平沢豊
・坂さんの熱意に押されて一冊作っちゃいました(平沢さんは雑誌「Dd」の編集長)。
・社会と循環型のコミュニティーでもっとデザインを盛り上げよう。


永井一正
・デザインは国の顔であり、文明と文化の接点。
・今までなかったことが本当に不思議。
・デザインの展覧会は客が入らないというが、田中一光展は盛況。
 (でも、写美、現美は大赤字…石原慎太郎は頭が痛いだろうなぁ)


サイトウマコト
・従来:いかにすばらしいものでも運営できなそう…結局作らない。
 →その程度の本気さではなく、さらに本気に!
・魅力的な展示を作るために、キュレーターグループを作る。
 (それにしても日本にキュレーターはいないんだよな、と嘆きつつ。)
・一般人によりデザインを意識させる。
 →グッドデザインを評価しない人間は人間に非ず、くらいに。
・何の興味がない人でもここに来ればデザインに対する意識の「タネ」を植えることのできる場にしたい。
・国にやらせては絶対ダメ!


木村恒久
・インターネット登場前→モノとしてのデザインの「実体概念」
・インターネット登場後→意味を創り出すための「関係概念」へと変化。
 (美と用→ネットワークへの変化。)
 →従来のカテゴライズ(テキスタイル、ファッション、アーキテクチャーのようなもの)
  は無力化していく。
・モノを基点にした分類をする(伝統系、都市系、ホーム系…)


黒川雅之
・採算のことを考えすぎ。なぜ必要なのかをもう一度考えて再構築するべき。
・過去の歴史的な家電を並べたりしても単なるゴミの山。
 →佐藤卓(「デザインの解剖シリーズ」)がやったように分解して意味を問う。
・企画展の展示品をストックし、コレクションするプロセスをも展示する。
・デザイナーだけの問題から、プロダクト産業全体で作ろうという機運を盛り上げなければ。
 →文化的価値がなければ産業的価値もないのだ、という風潮を作り上げる。
・サイバーミュージアムとリアルミュージアムとの相乗効果→マルチ・ミュージアム


隈研吾
・世界にデザインミュージアムがあるからといって、それにcatch up することばかり考えていないか?
 →今、日本に作る意味をもう一度考えよう。
・慶応が考えるんなら教育ともリンクさせたい。
・企業から脱却したデザイン(パース画ミュージアム壁面に書かれたロゴを見て)。


Astrid Klein、Mark Dytham(KDa)
・既に企業の名前の持つ価値はなくなっている。ブランドよりコンテンツが重要。
 →消費者はきちんと意味を見ている。
・そういう意味ではこの美術館のコンテナ建築はそれぞれがコンテンツ。
・カフェを計画しました。もし実現したら来てください。宣伝ですけどね(笑)
 →フードとかドリンクとかはもちろん、クリエイティブなムードを楽しんでください。

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4.フリーディスカッション

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・20世紀のデザインミュージアムの範疇で考えるのではダメ。リセットする。
・箱モノを捨て、既存のミュージアム乗っ取っちゃえば?
 →現美とか、森美術館とかをデザインミュージアムにしちゃう。
・静的なデザインミュージアムはダメ。常にイベントを。
 →キュレーターではなく、イベントプロデューサーのような人間を。
・過去のプロダクトを、デザインとみなしたのかどうかの検証。
・形のないミュージアム。プロジェクト単位で動く。巡回。
 →コレクションしてこその美術館。箱は必要。
MoMAミュージアムショップは土産物屋→採算を取ることの困難性。
PFIによる企業と大学のタッグ。
NPOという体制が理想的ではないか…

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5.まとめ(坂茂

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・今回提案した案はあくまでたたき台。どうか否定的に見ないで応援する気持ちでいて欲しい。