プログラミングとWebデザイン、そしてオープンソース時代のプロダクトローンチ戦略。

NTTデータは,Ajaxアプリケーションをビジュアルに作成できる開発ツール「マスカット」を,2006年9月中にオープンソース・ソフトウエアとして無償公開する。ボタンやタブ,ツリーなどの画面オブジェクトをマウスで配置してアプリケーションを開発できる。NTTデータによれば,JavaScriptを書くことなくアプリケーションを開発でき,工数が約60%削減されるという。オープンソース・ソフトウエアとして無償公開することでデファクト・スタンダードの地位を狙う。


Ajaxアプリのビジュアル開発ツール,デファクトを狙いNTTデータがオープンソースとして公開へ:ITpro


GUIAjaxが導入可能になるとすると、「htmlやCSSは理解しているけどプログラミング言語になった瞬間にちょっと厳しい」という層が一気に動き出す気がしますね(もちろん自分も含めて)。要件定義だけしていてもつまらん! 自分の手で動くものを作りたい! と思っているWebプロデューサーとかも。


そういえば、ぼくがデザイナーをやっていた時代に、FlashActionScriptをものすごく学びたかったのに諸事情あって断念して、それがきっかけでWebデザインという職種から足を洗ったんだな、ということをこの記事を読みながら思い出しました。


Webというプラットフォームの上でデザインを行うにあたっては、そのインタラクション性を無視したデザインでは、紙の上でデザインをやっているのと全く変わらない。今の自分からすると若くて青い極論ですが「動かないWebなんてWebではない」と考えていました。当時は。


もちろんUIについてとか、アクセシビリティについてとかひと通り学んで、「動くことだけがWebじゃない」と、若干心が広くなったのですが。ただ、ひとりのクリエイターとしては動く方が楽しいし、やれることが広がるの事実で。


そんな超極私的な体験から帰納法的に考えると、プログラミングの呪縛から解放されたデザイナーは、そのアイデアとツールの恩恵を十分に活かして、さらに良い成果物を生むことができるようになるんだろうな、と。


そしてもうひとつのポイントが、これがオープンソースのソフトウエアで、無償であるということ。


ユーザーにとって嬉しいことが必ずしも企業にとって嬉しくないことはたくさんありますし、ひとつの企業にとって嬉しいことが必ずしも市場全体から見ればそんなに喜ばしくないこともたくさんあると思うのです。結局ゼロサムゲームじゃん、それ、みたいな。


ただ、この例のように現時点で市場にないものをゼロコストでリリースすることは当然その企業なりサービスなりの市場認知度、浸透度をあげるだけでなく、市場(ここでいえばAjaxを用いたWeb制作業界)全体の利益に貢献することが可能になりますね。単なる(といっては角が立ちそうですが)APIの公開とはわけが違う、とても意義のあることだと思うのです。


現実的なことも考えておくと、タイトルにもあるとおりNTTデータさんは「デファクトを狙」って、言い換えるとAdobeにやられる前に、このタイミングでのローンチになったのしょう。先行者利益の大きいこの業界で、先にスタートしたデータさんを追走する企業は現れるのか、そしてそうなった場合逃げ切れるのか、そんなことを思いながらsourceforgeからダウンロードして使ってみようかな、と考えています。