個人情報をあえて垂れ流すという選択

わたしは先日、とあるIT系の会議で、Seth Goldstein氏が始めた「AttenTV」というサービスを知り、嫌悪感を抱くと同時に心を奪われた。AttenTVは、ほかのユーザーが訪問しているウェブサイトのビジュアルデータを提供するサービスだ。


他人のウェブサーフィン履歴が見られる新サービス「AttenTV」とは - CNET Japan
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20348376,00.htm


平たく言えば行動履歴の公開を前提としたスパイウェア。堂々と悪びれずリリースしているところがユニーク。


マーケター側からすればもちろんこの種のデータはのどから手が出るほどほしいわけです。どのくらいの時間帯にどんなサイトに訪れてどんなアクションをしているか。できることなら透明人間になって私たちが想定している「見込み顧客」の皆さんの行動を見ていることさえできれば、と思うこともあるくらいで。もしも消費者の行動履歴がウェブ上に限ってであっても完全な形でトラッキングできるシステムが誕生するならば、インターネットマーケティングに大きな恩恵をもたらすでしょう(ただ、先日「Googleが個人情報を集めた後にやるべきこと」で書いたように、オフラインを無視したオンラインだけの近視眼的なトラッキングと分析にはあまり意味がないということも付け加えておきます)。


ただ、サービスプロバイダー側も認識しているように、現時点ではこの種の「プライバシーの公開」には否定的なユーザーが圧倒的多数のようです。

これまでのところ、AttenTVで自らのクリックストリームを公開しているユーザーは、30人程度にとどまっている。


よって、興味本位で登録するユーザーが増えたとしても、個人情報やファイナンスの情報を入力するタイミングではそのスイッチをオフにするでしょうし、そもそも登録することにメリットがないと拡大は見込めないでしょうね。公開ユーザーに対して(マーケターからプールしたりして)キャッシュバックを行うなり何らかのインセンティブがないと、


ユーザー登録しない→ユーザー数増えない→コミュニティとして成長しない→サービスとして魅力がない→ユーザー登録しない(以下繰り返し)


というデフレスパイラルに陥ってしまいますね。怖い怖い……。


素敵なアプローチだと思うので、成長を期待しております!